機能強化の治療院

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院長コラム

第81回【腰痛の不都合?な真実】

更新日:

近年WHO(世界保健機関)を中心に『EBM(科学的根拠に基づく医療)』が推奨され、世界中に認識がひろがってきています、

それは腰痛も例外ではありません。

あらゆる研究や統計の結果を治療(予防)に活かそうと取り組まれています。

腰痛に関する科学的根拠はどのようなものがあるのでしょうか。

腰痛に関して研究が進められた結果、そこには不都合?な真実が。。。

今回は研究の結果、導き出された科学的根拠について紹介いたします。

僕的に厳選してお伝えしますね。

①画像所見はあてにならない

いきなり来ました。

画像所見とはいわゆる「レントゲン」や「MRI」などのことですね。

撮影した画像を元に診断に使われます。

おなじみですよね。

変形性だの椎間板ヘルニアだの、これを元に判断します。

それがあてにならないとはどういうこと?

とお思いでしょう。

もちろん画像はまやかしではありません。

レントゲンで骨が変形してたら実際変形してますし、

MRIで椎間板ヘルニアが有ったら実際存在します。

それなのに無関係とは??

あらゆる科学的検証の結果、

それらの構造異常と腰痛との関連が明確には認められないと言うことです。

例えば「骨の変形」。

これは高齢になるほど起こりやすくなります。

そりゃあ使い込んでるから当然ですよね。

ただ、高齢者が腰痛になりやすいかと言うとそうでもないのです。

実際に腰痛を訴える割合が高いのは、実は30,40台。

確かにこの頃に骨の変形はそれほどではないはずです。

椎間板ヘルニだって同様です。

高齢者ほど椎間板はつぶれてヘルニアや脊柱管狭窄症を起こしています。

つまり、構造的な異常ははるかに高齢者が多いのに

腰痛は30,40代となると関連性が危ぶまれますね。

確かに、画像所見と症状が一致しないことは珍しくありません。

ヘルニアが左に出て神経圧迫しているのに、症状は右とかね。。

更には、症状が治っても画像は勿論そのままですし、

また大規模な研究結果では「健常者」「腰痛者」の二軍を画像検査した結果、

「潜在性脊椎披裂」「腰仙移行椎」「分離症」「側弯症」「前弯過剰」「前弯減少」などの検出率は差が無かったとの報告もあります。

それらを受けて、アメリカの腰痛治療ガイドラインでは

見かけ上の背骨の変化と腰痛は無関係 と結論づけています。

以上のように書くと、画像全否定のような印象を受けられるかもしれませんが、

上記はあくまでも一般的な腰痛の話であって、

癌など危険な病気を発見するには画像所見がとても有効であると言うことを付け加えておきます。

②二足歩行は関係ない

次に二足歩行について。

よく腰痛の原因とされますね。

僕もそう思っていました。

しかし、次の事はどの様に説明されるでしょうか?

・人類が二足歩行するようになって350万年も経っている。それなのになぜ今頃(現代)になって腰痛が増加している?

・ヘルニアは四つ足の馬や犬にも起こる。しかも彼らの方が重症。

・無重力空間で活動する宇宙飛行士にも腰痛が多い。しかも高率で。

いかがでしょうか?

確かにそう言われれば...

少なくとも現時点では、「二足歩行だから」と言う理由は科学的には当てはまらないようです。

③姿勢は関係ない

むむっ!

これは聞き捨てならん!

僕は姿勢はとても大事だと思います。

人の身体も構造物である以上、

やはり姿勢は大きく影響します。

ただ、思い当たる節もある...

確かに、腰痛に関して言えば必ずしもではないよなぁ

一般的に「腰に悪い」とされる猫背や反り腰。

いかにも腰に悪そうな姿勢の方でも全く腰痛ない方も少なくない。

そう考えれば、科学的に診て因果関係が認められていないのも納得します。

④手術は必要ない

これはまた強烈ですね。

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、一般的に手術は行われています。

これが「必要ない」とはどういうことかと気になりますね。

ただ、科学的根拠として捉えようとすると、そういう結論にならざるを得ないとか。

その根拠としていくつか、下記参照。

・椎間板ヘルニア手術ラブ法追跡比較調査:1年後は90%(保存61%)、4年後、10年後有意差無し

・ヘルニア除去も症状変化なし、もしくは再発することが少なからずあると言う事実

・カイロプラクティックによる合併症の頻度は0.001%にも満たないのに対し、外科手術による重大な合併症の頻度は115

いかがでしょうか?

この辺のことはなんとなく耳にした事がある方もいらっしゃることでしょう。

以上のような結果を受けて、腰痛研究の権威 ナチェムソンは

「患者の98%は保存的に治療すべき」としています。

考えたら、手術は先に書いた「画像所見」を元にされるのですから、

それが原因で無いとしたら当然とも言えますね。

手術に関して、アメリカのガイドラインでは

・腰痛よりも下肢症状が強い

48週の保存療法でも改善がみられない の条件に加えて、

更には次の三つの条件を満たさなければならないと決められています。

①坐骨神経が耐えがたいほど強い

②坐骨神経痛が持続したまま一向に軽減しない

③画像診断によって明らかな神経根圧迫が確認される

ご参考まで。

⑤薬は?注射は?

腰痛で病院などに行くと、よく注射をしたり薬を処方されますね。

これに関する

腰痛に関して薬の効果はどうでしょうか?

薬に関することをいくつかご紹介すると

・NSAIDと呼ばれる痛み止めは効果があることは立証されている。但し問題は副作用のリスク。
副作用:胃腸障害、頭痛、耳鳴り、めまい、再生不良性貧血、顆粒球減少症

・非ピリン系のアセトアミノフェンと言う痛み止めはNSAIDと同等の効果があり、副作用がすくない。但し長期使用は肝障害の危険。

・筋弛緩剤は一般的な処方量では筋弛緩効果がほとんど見られない。

・コルヒチンと言う痛み止めは相反する証拠しかない。
副作用:短期⇒下痢や嘔吐、長期⇒再生不良性貧血や顆粒球減少症、血小板減少症

・オピオイド鎮痛剤(麻酔系)はNSAIDとの差異は確認できていない。
副作用:めまい、倦怠感、集中力低下、視力低下、視力低下、眠気、吐き気、便秘などのほか、依存性のリスクも大。

・抗鬱剤はプラシーボ(偽薬)より優れている証拠はない。危険な副作用はないが、口の渇きや眠気、便秘、起立性低血圧がありうる。

・湿布などは吸収率に個人差。

硬膜外ブロック注射は下肢痛に対しては短期的な効果はある程度認められている。
副作用:頭痛、発熱、重篤なの細菌感染による硬膜外膿瘍、軽い意識障害を伴う呼吸機能低下
※さらには、ある
調査によると全体の25%は不適切な位置に注射されているらしい。

・トリガーポイント注射は明確な効果はわかっていない。侵襲:神経や軟部組織損傷、感染、出血の危険性有。

・X線下の椎間関節注射は無作ほとんど効果は認められていない。
副作用:被爆の危険性、感染、出血、神経損傷、髄膜炎

・米ガイドラインでは、いずれの注射療法も侵襲的であり、急性腰痛の治療には勧められないと勧告している。

などなどですが、こうしてみると、腰痛の際に薬や注射をするかどうか考えちゃいますね。

薬や注射を使用する場合は、副作用リスクを正しく知った上で天秤にかけて決めるべきですね。

⑥効果的な治療は?

手術や薬による治療についてみてきました。

腰痛に関する治療はもちろんこれだけではありません。

物理療法や整体、カイロプラクティック、マッサージ、鍼、運動療法など様々なものが有りますね。

あくまでもエビデンス的なことで言うと、これらの従来の治療は腰痛に効果は認められないようです。

反論がある方も多いかと思いますが、あくまでもある時点までの科学的根拠で言うとですよ。

では何が効果的かと言うと、メンタル療法です。

ん?

なに??メンタル???

と疑問に思われることと思います。

ですが、研究大国アメリカではこれで頑固な腰痛が治ったと言う方が膨大にいらっしゃるようです。

これが一番の腰痛治療だとか。

特に慢性的な腰痛はかなりの部分メンタルが影響しているようです。

この辺についての詳細は省きますが、だいたい当てはまると僕自身確信しております。

興味ある方は是非調べてみて下さいね。

ただし、腰は物理的な負荷を受けやすい場所であることは疑う余地はありません。

無論、かなり頑丈な構造であるのですが、

負荷を受けて、

それが刺激となり腰痛のキッカケとなることは言うまでもないでしょう。

なので、メンタル的な部分が原因だとしても、

刺激されやすい腰の状態を、

刺激に負けないようにしておくことは良いに決まっています。

そうすることで自分の腰に自信がついて、

腰への不安が少なくなるほど腰痛は出にくくなるに違いありません。

なので、

「原因はメンタルだから身体のケアや運動しない」

と言うのではなく、やはり必要なことはすべきだと考えています。

あ、ちなみにカイロプラクティックのような手技療法は

「腰痛に効果がある程度認められる」

とされているようですよ。

⑦私見

先に書きましたが、

治療の現場にいても画像と症状の不一致は確かに少なくありません。

特に整形外科にいたときなどは画像をみながら治療することが多かったのですが、

その不一致はしばしば遭遇する事実でした。

一致していたとしても、症状が治った時に画像所見の異常がなくなるかと言うとそんなことはありませんでした。

なので、「画像所見」だけで治療にあたらないように気を付けていました。

また、手術に関しても様々な方を拝見しました。

手術された方ももちろんですが、手術を拒否された方々もみてきました。

あらゆる病院で「絶対手術」と勧められた方々です。

みなさん手術への抵抗が強くて、拒否されたまま様子をみておられました。

手術された方も、拒否された方もそれぞれ経過を観てきましたが、

現時点では「しなくて良いなら手術しない方が良い」と思っています。

これはあくまで僕個人の経験値からくる主観ですが、

手術をした方も時間が経つと再発することがあるし、

手術拒否された方も予想に反して回復していったのです。

緩やかな回復ではあるのですが、

「手術しなければ絶対に悪化する」との予言は外れる結果となったのです。

もちろんケースバイケースで、絶対に手術した方が良い場合もあることは大前提です。

アスリートのように急いで症状を取り除きたい場合には、

手術が功を奏することが多いメリットもあります。

ですが、一方で手術するデメリットやリスクも存在します。

費用・時間・術後侵襲・医療ミスなどです。

もし緊急など、急を要するものでないのであれば、

ひとまず手術はせずに自分の治癒力を高めていくことが僕のおすすめです。

いずれにせよ正しい情報を知った上で、リスクも勘案しながら自ら決めることが大事です。

幸い現代にはインターネットが有ります。

是非活用して、情報を「捕り」に行ってくださいね。

⑧米ガイドライン要旨

最後にアメリカのガイドラインをご紹介します。

なぜアメリカかと言うと、最も研究が進んでいるからです。

米国腰痛治療ガイドラインは以下の通り。

・急性腰痛患者の最初の評価では危険信号(重大な脊柱疾患やそれ以外の病変を示す徴候)の発見に焦点を当てる

・危険信号が無い場合、腰椎が発症してから最初の4週間は画像検査やその他の精密検査を行う意味が無い

・症状の改善は市販薬や脊椎マニュピュレーションによってもっとも安全に達成される

・急性期にはある程度の活動制限は必要かもしれないが、四日以上の安静臥床は役立たないばかりかかえって筋力低下を招く可能性がある

・負荷の少ないエアロビック(有酸素)運動は発症後2週間以内から安全にはじめることができ、筋力低下の予防に役立つ。

体幹筋のコンディショニング運動は少なくとも2週間待った後に始めるべき。

・急性腰痛から回復したら出来るだけ早く仕事や通常の日常生活に戻ることが望ましい

・腰痛症状が持続する場合は更に詳しい検査が必要である

・坐骨神経痛を伴う患者は回復に時間がかかる可能性があるが精密検査は先に延ばしても安全である

・腰痛発症後3カ月以内では、重篤な脊柱弛緩、耐えられないほどの激しい坐骨神経痛、画像診断によって確認できる神経根傷害の生理学的所見がある患者に限り手術効果が期待できる

・手術を行うか否かにかかわらず、坐骨神経痛患者の80%は最終的に回復する

・手術については、非身体的要因(精神的、社会・経済的問題)を考慮するべきである

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