①『ヒップポインター』とは
最近アメフトのタックル問題で騒がれておりますが、アメフトやラグビーなど激しくぶつかり合うコンタクトスポーツでは常に危険と隣り合わせです。
特に打撲(打ち身)は日常茶飯事と言ってもよいくらい頻度は高く、全身のどこにでも起こりますが、「打ちどころが悪かった」ケガの代表が『ヒップポインター』です。
『ヒップポインター』は『腸骨稜(ちょうこつりょう)』と言う場所に起こります。ここはウエストのところ、ズボンやスカートを引っかける骨盤の横側、上の部分です。
腸骨稜には腹筋やお尻・フトモモなどの強力な筋肉がくっついており、日頃から筋肉に強く引っ張られて極めて大きなストレスに曝される場所です。ここを打撲するわけですから痛いのなんの。
② 症状
ヒップポインターの症状は以下の通り。
・圧痛:触れての痛み
・筋収縮痛:該当筋(負傷部に付着する筋肉)の収縮・伸張などで痛む
・歩行障害:痛みで歩けない、足を引きずる等
・腫れ:負傷程度による
・皮下出血班(内出血):負傷程度による
※受傷時は痛みが無く、後に出現してくることが多い。
③ 治療法
受傷後少なくとも48時間は『RICE法』(第11回「応急処置RICE法」参照)を行います。
歩行痛等がひどい場合は「松葉杖」を使用します。腫れや熱感など炎症症状が緩和してきたら「温熱」に切り替えて血行を良くします。その後痛みの減退とともに「ストレッチ」も加え、運動レベルも徐々に上げていきます。
④ 予後
ヒップポインターはほとんどの場合、重症化せずに治ります。
ただし、痛みがあるのに無理して動き続けると、場所的に悪化しやすく治癒期間も延びてしまうので、他のケガ同様に痛みと相談しながら進めていきましょう。
⑤ 私見ですが
ラグビーでもちょくちょく起こります。
骨盤部はタックルを受けやすい場所なので他選手の頭や肩、膝などがぶつかりやすい場所です。
肉の多いおしりであればクッションとなるため良いのですが、運悪く腸骨稜をぶつけてしまうと傷めてしまいます。(中でも大腿筋膜張筋や中殿筋前部線維など前側に多い)
損傷がひどくなくても、こういった体表から骨がすぐ触れる様なクッション性の低い場所ほど痛みが長引きやすい傾向があります。(筋肉の付着部は血流もイマイチ)
中には復帰してからも痛みを抱えながら競技している選手もいますので、やはり無理は禁物です。
痛みは動作の乱れを必ず招いて他の大ケガのもとにもなります。ご注意を。