機能強化の治療院

機能強化の治療院|くろしん接骨院

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院長コラム

第70回【スポーツ現場での顔面部外傷】

更新日:

今回は顔面部外傷についてまとめます。

① 顔面部外傷

顔面部はアメフトなど一部を除いて、競技中も露出されています。

そのため衝撃など外力を直接受けやすいのですが、それに対して顔面部は脆い場所と言えます。

 

顔面部は頑丈な骨で構成されている頭部と異なり、薄い骨でできている箇所が少なからず存在しています。

また、眼球や鼻、口など、外力に対して弱い器官も集中しているため、デリケートな場所とも言えます。

そのためラグビーのタックルや空手の突き蹴り、野球の投球打球など、直接外力を受けてしまうと簡単に負傷してしまいます。

「あたりどころが悪い」と言う表現がぴったりで、薄い骨の箇所であれば安易に骨折し、感覚器であれば視覚や聴覚、嗅覚、聴覚などに障害が出ます。

更には、鼻腔や口腔内出血による気道閉塞や頭頚部外傷を合併することもあります。

そのため、外傷内容によって耳鼻咽喉科、形成外科、歯科口腔外科、整形外科、眼科、脳神経外科と言うように、必要な診療科目も様々で、時には複数科目の協力が必要なこともあるのが特徴です。

スポーツ現場での顔面部外傷への対応では、これらを踏まえて行わなければなりません。

それぞれみていきましょう。

 

② 鼻血

まず何と言っても多いのが「鼻血」です。

ラグビーでもしょっちゅう発生します。

鼻血は医学的には「鼻出血(びしゅっけつ)」と言って、鼻腔内で出血を指します。

スポーツ外傷時には鼻腔の「キーゼルバッハ」と呼ばれる部位(鼻の穴から1センチくらいのところ)の粘膜からの出血です。

発生時の対応としては、止血あるのみ。

僕の実践法としては、まず鼻を抑えて止血して、その後血液を洗い流して脱脂綿を詰めて終わり。

脱脂綿は、鼻血専用の、あらかじめ丸まっている商品があって、それを重宝しています。

また、現場で教わった方法としては、脱脂綿にコールドスプレーをさっと吹きかけて冷やしたものを鼻に詰めています。

今のところこの方法で100100中止めていますが、中には骨折性の鼻血もありますので、骨折確認もお忘れなく。

止血が出来て、他に異常無ければプレー続行です。

 

③ 骨折

鼻血の際など、骨折の有無を確認するためにも、起こり得る骨折について知っておかなければなりません。

顔面部で起こりやすい骨折は以下の通りです。

≪顔面部の骨折≫

・頬骨骨折

・頬骨弓骨折

・前頭骨骨折

・上顎骨骨折

・下顎骨骨折

・鼻骨骨折

・鼻篩骨骨折

・眼窩骨折

 

いかがでしょうか。

結構色んな種類がありますよね。

これらの症状は骨折部位によって異なります。

各骨折とも凹凸など「変形」や「痛み」を確認しやすいのは共通ですが、口の周りであれば「開口障害」や「咬合異常」、目の周囲であれば「複視(※)」や「眼球運動異常」、鼻の周囲であれば「鼻出血」は勿論、「高度な鼻づまり」や「嗅覚異常」と言うように、その部位によって出現する症状が異なります。

また、神経損傷も合併すると痺れなどの感覚異常が起こることも珍しくありません。

 

先の述べたように顔面骨の骨は頭部と違って、薄い骨部分が多いため意外とあっさりと折れてしまいます。

骨折確認する際には、以下のポイントをおさえます。

 

≪顔面骨骨折の確認ポイント≫

①視診(腫れや変形)

②触診(患部凹凸、圧痛、知覚異常)

③開口テスト(指三本分口が開くか?)

④眼球テスト(眼だけの動き、二重に見えないか)

 

 

もし骨折が疑われれば原則としてプレー続行は止めさせて退場となりますが、僕の経験では、鼻血のみで痛みも無いけど、眉間付近の凹みのみかろうじて触知できたケースもありました。

顔面部骨折が疑われたら、緊急性だけ見極めて、適切なタイミングで専門医を受診してもらいます。

 

④ 歯の外傷

歯を傷めることもたまにあります。

歯の損傷は、大雑把に分けると『破折』『脱臼』です。

 

『破折(はせつ)』とは歯が折れたり割れたりすることですが、その損傷状態によって症状も異なります。

歯の治療などで「神経に触る」と言うような話をしますが、まさに同様。

「歯髄(しずい)」と呼ばれる部分に歯の神経が存在しているのですが、破折がここに到達するか否かによって症状が異なります。

歯の治療時と同様に、歯髄に達していなければ無痛だし、達していれば激痛です。

また、歯髄に達している場合は、感染の恐れもあるため要注意です。

破折は表面から見える「歯冠(しかん)」であればすぐに確認できますが、歯茎の中の「歯根(しこん)」で起こっているとわかりにくいケースがあります。

その場合、痛みや腫れ、出血などの症状と共に歯のぐらつき」や「歯のズレ」などがみられれば(歯根骨折の)存在が考えられます。

破折では、その折れ方、割れ方によって治療法や予後も異なるようですが、いずれにせよ割れたかけらは保管して、歯医者さんに持参しましょう。

 

次に『脱臼』。

歯に外力が加わって、歯が骨から離れるような状態を「脱臼」といいます。

歯には「歯根膜(しこんまく)」と呼ばれる歯と骨を繋ぎとめている繊維があるのですが、ここが断裂した結果が正常位置から離れてしまいます。

完全に元の位置から離れると「完全脱臼」。ずれただけであれば「不完全脱臼」と呼ばれます。(関節脱臼と同じですね)

 

脱臼の場合、すぐに手当をすれば治すことが出来ます。

抜けた歯が助かるかどうかは残った「歯根膜が生きているかどうか」にかかっているようです。

歯根膜は乾燥に弱く、口の外ではおよそ30分ぐらいしか生きられないそうです。

従って歯が抜けたら、直ちに歯医者さんに行くか、駄目なら自分で元の位置に戻します。

戻すまでの間、脱落歯を「牛乳の中」に漬けておくか、「口の中」に含んでおくと歯根膜を数時間生かしておけるようです。  

 

以上のように、歯の外傷では歯が欠けても、抜けても、基本は歯を保存して、歯医者さん受診が必要ですね。

僕の経験では「歯冠破折」と「歯の不全脱臼」があります。

前者は無痛だったので後日歯医者さんで修復、後者は当日受診して、ひとまず隣歯と接着固定を行いました。

結局そのまま安定して、マウスピースをつくりなおしていました。(歯並び変わって)

 

 

⑤ 目の外傷

次は目の外傷です。

目は結構怖い場所ですね。

どう考えても鍛えようのない弱い急所だし、「失明」なども耳にします。

目をぶつけて起こす外傷で重度疾患の代表は『眼球破裂』『眼窩(がんか)骨折』です。

それぞれみていきましょう。

 

まずは『眼球破裂』から。

「眼球破裂」はその名の通り、眼球が破裂して中身が外に出てくるような損傷です。

言うまでもなく症状は重篤です。

 

主な症状は以下の通り。

 

≪眼球破裂症状≫

・著しい視力低下

・目の痛み、異物感

・眼球充血、腫れ

・温かい涙(眼内液体漏出による)

 

眼球破裂を起こした場合は、緊急で眼科受診が必要です。

勿論「退場」しかありません。

 

治療が遅れるほど「失明」のリスクが高まります。

感染の恐れも高いので、自分での洗浄はしない方が良いでしょう。

とにかく緊急で眼科受診が望まれます。

 

次に『眼窩骨折』はどうでしょうか。

②の「骨折」でも挙げられましたように、これは顔面骨骨折の一種です。

「眼窩」と言うのは眼球を入れるくぼみのことですが、これは7種の顔面骨によって構成されています。

眼窩部を構成する骨は、その内部に「副鼻腔」という鼻に通じる空洞を持っているものがあります。

その空洞は眼窩と骨の壁によって仕切られているのですが、そこは非常に薄く弱い構造になっています。

ボールが当たったり、コンタクトプレーでぶつかるなどして、眼球へ衝撃が加わった際に、その衝撃により発生した圧力で、弱い「壁」が脆くも破壊された損傷が「眼窩骨折」です。

 

眼窩骨折の症状は以下の通り。

≪眼窩骨折症状≫

・眼部腫脹

・眼球運動障害

・眼球運動痛

・頬部の知覚異常

・複視(二重に見える)

・視力低下

 

眼窩骨折でもやはり眼科医受診が必要です。

ただし、成人であれば多くの場合、緊急受診はあまり必要ありません。

骨が硬いことでパキッと折れて、それが結果的に二次損傷を起こしにくいとのことです。

 

でも、未成年(特に小児)は違います。

骨が柔らかくパキッと折れないことが災いして、眼球から飛び出した中身が骨折部で挟まれて、二次損傷を起こしやすいそうです。

その際には「激しい眼球運動時痛」「吐き気」を訴えることが多く、これらがみられれば急手術が必要」と言うサインです。

この場合も遅れれば遅れるほど、以後の状態が悪くなります。

また、眼窩骨折時にも「鼻血」が出ることがあることも知っておきましょう。

この場合に鼻をかむと眼窩内に空気が逆流して症状を悪化させる可能性があります。

したがって、目付近をぶつけて、目の症状の他に鼻血が出ていても「鼻はかまない」ようにしてください。

 

「眼球破裂」と「眼窩骨折」について説明いたしましたが、他にもさまざまな外傷や「網膜剥離」のような怖い疾患が起こることもあります。

おおよその症状は似かよっているのですが、スポーツ現場において重要なのは緊急対応が必要かどうかを見分けることです。

緊急対応すべき目安としては「急激な視力低下」「激しい眼痛」「外見上の激しい異常」が挙げられます。(ちなみに網膜剥離では「飛蚊症」「光視症」「視野異常」)

 

これらを絶対に見逃さず、一刻も早く専門医受診へ導かなければなりません。

 

ラグビーでも目の外傷は少なくありません。

「眼窩骨折」を起こした選手もいましたが、ほとんどは「打撲」程度で、「安静及びアイシング」でほどなくして回復します。

但し、中には後に発症するケースもあるため、強くぶつけた際には念のため眼科受診をさせる方が無難かもしれませんね。

 

 

⑥ 耳の外傷

最後に耳の外傷について。

スポーツで起こる耳の外傷の主たるものとして、『鼓膜穿孔(こまくせんこう)』『耳介血腫(じかいけっしゅ)』が挙げられます。

 

『鼓膜穿孔』はいわゆる「鼓膜が破れた」ことです。

平手打ちで耳を打たれるような外力が加わった時に発生します。

鼓膜が破れた時には「軽度の難聴」「耳痛」「耳出血」等の症状が起こります。

 

スポーツ現場での対応としては「水が入らないこと」「圧力が鼓膜にかからないこと」さえ気をつけていれば、プレー続行は可能です。

 

鼓膜は再生能力が高いため、多くの場合は放っておいても一週間程度で治ります。

ただし、治りにくいケースや感染することも稀にあるため、念のため耳鼻咽喉科を受診すべきでしょう。

 

『耳介血腫』はいわゆる「ぎょうざ」。「カリフラワー耳(似てるか?)」とも呼ばれています。

柔道やラグビー、レスリング選手などに多くみられますね。

これは「耳介(耳たぶより上の部分)に内出血」が起こったもので、そのままにしておくと固まって耳が変形してしまいます。

 

症状としては「腫れ」と「痛み」ですが、変形が強くなると耳の穴が狭くなってしまう為、少し聞こえにくいと言う選手もいます。

耳介血腫が起こった際には、注射器で内出血を吸い出すのですが、一度起こすと再発しやすいため、面倒になり放置して「ぎょうざ」が形成されるケースが散見されます。

 

まぁ、ほぼ「見た目だけ」の問題なので気にしないなら、そのままで良いかと思いますが、気にするのであれば血腫除去を行った上で、耳にガードを装着してプレーするなど、予防することが大事でしょう。

 

⑦ 最後に

顔面部外傷、頻繁に遭遇します。

鼻血はしょっちゅう、たまに骨折。慢性化したギョウザ耳の友人多数。

顔面部の外傷は、感覚器の集中もあり、症状にとても敏感で分かりやすいことが多いです。

そのため選手の訴えも明確で、見た目にも把握しやすいのですが、一方でプレーに大きく影響すると言う面も持っています。

例えば、手足の傷による出血ならそのままプレーは可能ですが、顔面部では出血によって目が見えないなど、多くの場合プレーの中断を余儀なくされます。

 

また、一口に「鼻血」と言っても、それを起こす損傷が複数存在するなど、症状が重なり合っていて、そういう意味では潜在疾患のリスクが高い外傷とも言えます。

更には、重度損傷や頭頚部外傷合併もありうることから、顔面部は多岐に及ぶ損傷への「見極め力」と「対応力」が求められる場所だと思います。

 

 

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