「どうすればもっと背が高くなるか」
よく質問をいただきます。
成長期のお子さんたち、そしてその親御さん達を中心に多くの方の関心ごとですね。
今回は「身長を伸ばすにはどうすればよいか」について解説していきます。
身長は遺伝か?
身長について考える時、まず頭に浮かぶのが「遺伝」ですね。
実際の遺伝は間違いなく影響します。
どの程度影響するかと言うと、80%とか90%、25%など、調べると諸説あるようですが、僕は80%くらいが的を得ているように思っています。
遺伝を元にした「身長予測計算式」があるのでご紹介しておきますね。
男児の予測身長=(父親の身長+母親の身長 +13) ÷ 2
女児の予測身長=(父親の身長 + 母親の身長 − 13) ÷ 2
これでおおよその将来の身長が予測できるようです。
ただ、これはあくまで遺伝的な話。
身長を伸ばしたい時に、どうこう変えられる要素ではありません。
アプローチできるのは遺伝以外の部分。
上記を踏まえれば「残り20%」の要素に賭けることが大事です。
以後は、「残り20%」を生かして、身長を伸ばすことに向け書いていきます。。
身長が伸びる大前提
身長を伸ばすにあたって、「成長期」であることが大前提です。(当たり前ですが)
人間はこの特殊な限られた時期にしか身長を伸ばすことはできません。
成長期は文字通り「身体が成長する期間」のことを言います。
産まれると同時に始まって、いつ終わるかは人それぞれ。
一般的には男女ともに18歳くらいまでと言われますが、遅い場合は20歳過ぎまで続くケースもあるようです。
「成長期」である目安は「骨端線(こったんせん)」が残っているかどうかです。
これは未完成の骨に端の方にみられる“まだ骨に成っていない軟骨”のことを指します。
成長の過程では、この軟骨が増殖していくことで骨が伸びていきます。
しかしそれにも限界があります。
年齢が進むとともに、骨端線の軟骨組織は次第に骨化していきます。
そして最後には完全な骨となり、成長は止まってしまいます。
つまり、「骨端線」の存在こそが成長期である証しなのです。
骨端線をいかに成長させられるかこそが「身長を伸ばす」と言うことなのです。
成長ホルモン
骨端線を成長させるために、絶対に欠かせないのが『成長ホルモン』です。
成長ホルモンはその名の通り「成長期」に多く分泌されるホルモンで、身長を伸ばすためには必要不可欠です。
成長ホルモンは、主に肝臓に働きかけてIGF-1(ソマトメジンC)と呼ばれる物質の分泌を促します。
このIGF-1こそが骨端線の軟骨を増殖させる作用を持っていて、分泌量が多いほどその作用は強くなります。
つまり「身長を伸ばす」にはIGF-1分泌量を増やす必要があるのですが、そのために必要なのが「成長ホルモン」なのです。
いかに成長ホルモンを多く分泌させ、IGF-1分泌量を増やせるかと言うことが身長を伸ばすための重要なカギになります。
『寝る子は(ホントに)育つ』
ではどうすれば成長ホルモンを増やせるのでしょうか。
成長ホルモンと切っても切り離せないのが『睡眠』です。
若年者の場合、成長ホルモン分泌の多くが睡眠時に行われます。
(若年男性:1日のGH分泌量のうち約60〜70%,若年女性:5割未満)
分泌量は眠りの深さに関係していて、睡眠開始から30分~1時間ほど経過した時に起こる「ノンレム睡眠」の間に特に多く分泌されます。
以前は『ゴールデンタイム』と言って、午後10時~午前2時の間に寝ていると成長ホルモン分泌には必要との認識がひろまっていましたが、「時間帯」よりも「深い睡眠」の方が影響が大きいことが分かっています。
ですので、こだわるべきは「睡眠の質」と言えるでしょう。
そのためには「規則正しい就寝リズム」と「睡眠時間」が大事ですので、そういう意味でも『寝る子は育つ』と言えるでしょう。
【奨励睡眠時間】
1~3歳 12~14時間
3~5歳 11~13時間
5~12歳 10~11時間
中学生は7時間以上
『多種多彩にバランスよく』
栄養も成長には欠かせません。
食べたものでしか身体はつくられません。
身長を伸ばす場合「カルシウムだけを摂ればOK」と考えるかもしれませんが、実際にはそうシンプルなものではありません。
「タンパク質」や「カルシウム」など“骨の材料”だけではなく、その骨を丈夫にする「マグネシウム」や「ビタミン類」、そして成長ホルモン分泌を促す「亜鉛」など、様々な栄養素が必要です。(ちなみに成長ホルモンの材料はタンパク質です)
栄養摂取は「量」も大切です。
必要摂取量など細かいデータは割愛しますが、ある程度しっかり摂る必要があります。
特に運動をしているお子さんはエネルギー消費の多さから「カロリー不足」となったり、大量の発汗によりカルシウムが流出してカルシウム不足になることもあるので注意が必要です。(栄養不足分を補うために筋肉や骨を溶かしてしまうことも)
また、過剰摂取も問題で、「タンパク質に偏った摂取はかえって骨を弱らせる」「カルシウムはマグネシウムと「2:1」の割合で摂取する。カルシウム過剰は骨が弱る」など、あくまでもバランスが大事と言えます。
なにごとも「過ぎる」はよくありませんね。
身長を伸ばすためには、健康同様に「多種多彩にバランスよく」食べることが大事ですね。
しっかり遊ぶ、身体を動かす
骨の成長にとって身体を動かすことも重要です。
運動すると成長ホルモンの分泌が促進されることが分かっています。
傾向として“運動強度が強い”方が分泌量が多いようです。
また、骨端への適度な刺激が軟骨増殖を促すとも言われています。
更には、運動することで食欲が増進させ、熟睡をもたらしますので、あらゆる相乗効果が期待できます。
屋外での運動では日光にあたることで骨の強度が強くなることも知っておくべきでしょう。
しばしば「筋肉をつけすぎると背が伸びなくなる」と言う声を耳にしますが、今のところこれについては明確な科学的根拠はないようです。
ですが、先に述べたような運動によるエネルギー消費の多さから成長鈍化を招くことは考えられます。
また、重いダンベルを用いての筋トレや体操選手の着地のように、骨端線に過度な負荷をかけることは、かえって成長を阻害する要因になるであろうと言うことはイメージできますね。
そういった極端な例を除けば、運動することは身長を伸ばすことに良い影響を与えるでしょう。
「成長スパート期」を逃さない
成長期の間はいつでも身長が伸びると言うわけではありません。
『成長スパート期』と呼ばれる、身長が集中的に伸びる時期が存在します。
身長を伸ばそうと考えた時、この時期は絶対にはずせません。
成長スパート期は成長期の間に二度あります。
一度目は「第一次成長期」と呼ばれ、「生まれてから4歳くらい」までの間です。
この間は人生の中でもっとも身長が伸びる時期で、約二倍くらいの大きさになります。
この時期は「生後すぐ」がスタートなので、極めて明確ですね。
問題は二度目の「第二次成長期」です。
この時期は個人差が大きく、始まりも終わりも人それぞれで異なります。
おおよその目安としては、女子の方が早くて10歳頃、男子は12歳頃から始まります。
終了時期は先述の通り男女とも18歳頃とされていますが、これも人によってまちまちです。
それこそ「骨端線」をレントゲンで確認すれば、成長の余地がわかりますが、本来の対象であるケガや病気ではありませんので現実的ではありませんね。
「第二次成長期」には「大人の身体」への変化が徴候として現れますので、これを目安とするのも一つでしょう。
いずれにせよ、「成長スパート期」だけを狙い撃ちすると言うよりは、成長期全期間を通して背を伸ばすように取り組むべきでしょう。
身長だけではなく、すべての発育発達、そして健康にもかかわりますから。
まとめ
以上、「身長を伸ばすため」について書いてきました。
取り組むべきことについてまとめると以下の通り。
・規則正しく、時間をかけて寝る
・バランスよく、量もしっかり食べる
・身体を沢山動かす
こうしてみると昔から「大切」と言われてきたことばかりですね。
医学の進歩により様々なことが分かってきていますが、原点は一緒だと言うことでしょう。
結局はこれ、なんですね。
但し、一方では子供達を取り巻く環境はかなり変化しています。
戦後の栄養摂取の改善から、飛躍的に伸びてきた身長も近年伸び悩んでいるそうです。
ここ数年は、むしろ低くなってきているとか...
原因については研究が進められているようですが、有力説としては「睡眠・運動不足」に加え、「高ストレス社会」があるようです。
現代っ子たちは、幼い時から英才教育や様々な絵お稽古事を受けれるようになっている反面、子供らししい生活が出来なくなっているように思います。
小さいうちから「能力開発」していくことも大事だと思いますが、成長期にしかできない「成長」を育んで行く事の方が最優先なのはないでしょうか。
なんと言っても、その子の一生を支える土台ですから (^J^)