運動器とは文字通り「運動するための臓器」のこと。
その働きを総称して「運動機能」と呼びます。
競技のパフォーマンスアップやケガのリハビリ、健康増進などすべてにおいて大切なのは「運動機能の向上」です。
運動機能を向上させるとき、どんなことが必要でしょうか。
今回はそんなお話です。
『目標設定』
自分で何かを変えたい時には必ず「目標」が存在します。
例えば
「もっと速く走れるようになりたい」
「相手にぶつかっても当たり負けしないようになりたい」
「ケガを早く克服したい」
「慢性腰痛を治したい」
自分を変えるのは自分自身の努力次第。
それを支えるモチベーションを保つためにも『目標設定』は重要です。
具体的、定量的(数値化)であればあるほど良いですね。
『アセスメント』
「目標」と共に大事なのが「現状認識」。
今の自分を知ることが大事です。
そこで行うのが『アセスメント』。
これは「評価」のことですが、筋肉や関節などの働きをチェックして「現状認識」を行います。
現時点での自分の立ち位置を的確に理解することで、未来にむけて何をすべきか明確になります。
『アセスメント』と『目標設定』は優先順位は問いません。
まず目標がありきで対する現状課題を知るのも良し、現状の課題を知った上で目標設定となることもあるでしょう。
いずれにせよ、より確かな向上を目指すのであれば、この両者とも必須です。
これらを踏まえ、『計画』を立てたりするのですが、ここでは端折らせてもらいます。
あ、症状などがある場合は、最初にそれを医学的にチェックしますので、念のため。
要点①『可動性』
では「運動機能の要点」について見ていきましょう。
運動機能として、まず大事なのはなんといっても『可動性』です。
医学的に言えば「関節可動域」のことと言っても差支えないかと思いますが、関節が動いてくれなければ運動どころではありませんね。
車に例えて言うならば、正常な可動性とは「タイヤがスムーズに回せる」と言うこと。
回る時に擦れて抵抗があったり、何かの部品がぶつかっていたら危険ですよね。
仮に走れたとしても、どこか壊れてしまうでしょう。
どんなに良いエンジンでも、タイヤが回らなければ意味がない。
身体でも関節がきっちり動いてくれることが、まず最初の条件と言えます。
『可動性』には、自分が直接その場所に力を入れて動かす「自動運動」と、他の力を用いて動かす「他動運動」が含まれます。
要点②『安定性』
そして次は『安定性』です。
これは「支える力」です。
先に挙げた『可動性』は最も大事な機能ですが、かといっていつもどこもかしこも動いてもらっては困るんです。
車で言えば、走行時にボディはグラつかずに安定したほうが良いに決まっています。
グラつけばグラつくほど、運転しやすさだけでなく、燃費や丈夫さに悪影響を及ぼしますね。
つまり、車の走行中はタイヤはしっかり可動しても、ボディはカチッと安定している方が良いのです。
これは私たちの身体も同様。
動くべきところは動き、安定すべきところは安定していることが動作時には望ましいのです。
要点③『協調性』
『可動性』と『安定性』を挙げましたが、それらをうまく使いこなすのが『協調性』です。
適時適切、身体の各部をコントロールするのがそれにあたります。
車で言えば、「電子制御」でしょうか。
どんなに素晴らしい性能を持った車でも電子制御に不具合があれば走ることはできません。
各部が優れた性能を持っていても指令が伝わらなければ働くことはできないからです。
人間で言えば「神経系」が適時適切、指令を伝えられなければ決してうまく動けません。
様々な情報を受けとりながら、指令を瞬時に、そして臨機応変に伝える必要があるのです。
これは人では『神経系』に当たるでしょう。
私たちの動作はすべて『神経系』によって制御されています。
そのほとんどが無意識のうちに、微調整が行われています。
とりわけ人の動作においては、その作業は極めて精密・複雑です。
同じ場所でも、時には『安定』、時には『可動』が求められます。
例えば「足首」。
立っているだけなら動かなければ良いだけですが、歩くとなると可動しなければなりません。
それが全身的に、しかも同時に制御されるのですから、まさに神の領域と言っても過言ではありません。
『協調性』とは、このように制御されて行われる「動作そのものがいかに上手にできるか」と言うことを指しています。
そのためには繰り返し繰り返し、その動作を練習することが必要です。
競技であれば競技動作、普段の生活動作であればその動作を、とより良いパターンを身体におぼえこませなければなりません。
それこそが神経系のトレーニングであり、『協調性』の向上なのです。
『実践』はなにをする?
運動機能の要点として、『可動性』『安定性』『協調性』を挙げました。
目標を立て、アセスメントで課題を見つけ、これからいざ何をしようか。
世の中に、その手法は様々あります。
どれが一番とは一概には言えませんが、具体例を挙げるとすると、
『可動性』・・・ストレッチ、関節モビリゼーション
『安定性』・・・体幹トレーニング、ピラティス、不安定トレ
『協調性』・・・動作訓練、競技動作
と言う感じでしょうか。
実際には、これらの内、手法がかぶっていたりするので、このようにキッチリ分けられないと考えます。
僕の実感では「絶対にコレ!」と決めるよりも、様々な手法からフレキシブルに採用していくのが良いと思っています。
いずれにせよ、ご本人にとって継続しやすいトレーニングをつくって行くことが大事でしょう。
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最後に
以上、運動機能の向上についての説明をいたしました。
「身体を変えたい」と言う方の参考になれば幸いです。
先述したように、これはアスリートに限りません。
一般の方、「弱い」「ふらつく」「慢性症状」などでお悩みの方すべてに可能性があります。
「歳だから...」「身体が悪いから...」と決してあきらめないでください。
実践さえ積み重ねられれば、身体が応えてくれるはずです。