今回は膝について書かせて頂きます。
そうです!それが今回のテーマの“膝の痛み”です。
ヒトが二本脚で歩く時、大きな大きな仕事をしてくれる膝。全体重を、時には一人(片方)で受け止めながら、身体を運んでいきます。その負担はとても大きく、その為にトラブルもたくさん起こります。
積み木二本?
そもそも、膝は不安定です。骨組みを見てみましょう。
下腿骨の上に大腿骨が乗っかっているだけで、骨同士の噛み合わせはほとんどありません。これは二本の長い積み木がタテに重なっているようなもので、息を吹きかけただけでも倒れてしまいそうですね。でも実際には、靭帯や軟骨、筋肉によって、強固に連結されています。(“骨付き鳥モモ肉”のイメージです)
そしてこの連結は、膝の動きを誘導します。膝の動きと言えば、曲げ伸ばしだけのイメージですが、実はもっと複雑です。曲げ伸ばしと同時に捻じれるように回旋したり、左右へ少し曲がったりもします。これらの動きがバランスよく合わさって、膝はスムーズに働けるのです。(昔と比べ、最近の二足歩行ロボットは、この膝の動きがしなやかで凄い!)
大きな負担
このように強靭、かつ精密な働きをこなす膝ですが、常に大きな負担に曝されています。
例えば、歩いているだけでも体重の約2、3倍、階段を下りる時には約7倍、走ったときには体重の約10倍と、動きによって体重負担が倍増します。
そのため、酷使や怪我はもちろんですが、日頃の負担の積み重ねでも、トラブルが多く発生します。トラブルの種類も様々で、スポーツ外傷で有名な半月板損傷や十字靭帯断裂、加齢により起こりやすい変形性膝関節症、成長期のオスグッドシュラッター病など、実に多くのバリエーションがあります。いずれにせよトラブルはそれぞれ、傷めた場所に応じて不具合が発生します。
骨や軟骨など直接体重がかかる場所であれば、荷重時の不具合が出やすいですし、靭帯など動きを誘導する場所であれば、動かすことに不具合が出ます。また、筋肉やその付着部などでは力を入れたり、その筋肉をストレッチした時に不具合が出ます。
治療の原則
治療の場合、どのタイプに当たるのかを見極めながら行う必要があります。タイプ別の、適切な治療を行い、少しでも早く苦痛を減らすことが大事でしょう。
但し、どのタイプにも共通する、忘れてはいけない原則があります。
それは、膝だけでなく下半身に総じて言えますが、『負担を減らす』ということです。
ここで言う『負担を減らす』とは、安静だったり、補装具を用いると言うことではありません。あくまでも根本的なお話です。
具体的に言うと、減量であったり、筋力強化であったりします。特に、筋力は絶対に必要で、強ければ強いほど良い効果が得られるでしょう。体重に対しての筋力の強さが、膝の負担に大きく左右するのです。さらに付け足すと“使い方”も大事です。関節面が、体重を偏りなく受け止めながら、潤滑に動かせているかということです。 姿勢が傾いていたり、歩き方が悪いと、仮に体重が軽く筋力も十分にあったとしても、膝は傷んでしまうことでしょう。
変えられる!膝の健康
以上のように『体重』『筋力』『使い方』と言うのは、すべての膝にとって絶対に避けて通れない大事な健康要素です。ここを踏まえなければ、根本的に膝が強くなることはありません。
しかも、忘れてはいけません。この三つの要素は、“変えられる”のです。
今の医学をもってしても、変形した骨や、一度傷めた軟骨、靭帯を全く同じように戻すことはできません。(戻せるとしたらIPS細胞で話題の再生医療でしょう)
しかし、体重を減らしたり、筋力をつけたり、使い方を改善すると言うことは、確実に変えられることなのです。「老化だから...」「治らないと言われたから...」とあきらめないで、変えられる、かつ大事な原点に的を絞って取り組みましょう。時間はかかりますが、いまよりもっと楽になることでしょう。