①『ターフトゥ』とは
『ターフトゥ(Turf Toe)』 聞かれたことがある方は少ないのでは?これは足の親ゆび(以後“母趾”)のつけ根の関節を傷めるケガです。後に書きますが、靭帯を傷めるので「捻挫」と言っても良いかもしれません。
「Turf」は「芝」で「Toe」は「つま先」を意味しますので、「芝で行うスポーツで起こりやすい、つま先の捻挫」と言ったところでしょうか。
② 発症メカニズム
ターフトゥでは、母趾に体重をかけながら強く反らすことで引き起こされます。その状態では「プランタープレート(Plantar Plate)」と言う靭帯が強く引き伸ばされてしまい、堪えきれず切れてしまいます。(この力が繰り返し加わることでも発症)
元来、母趾の付け根は非常に大きな負担がかかる場所なので、「種子骨(しゅしこつ)※」が存在しているのですが、プランタープレートはこの種子骨に付着して母趾の関節の動きをサポートしています。つまり、これが切れてしまうと種子骨が不安定になるばかりでなく、つけ根の関節が大きな負担に曝されてしまいます。その結果、発症するのがターフトゥなのです。先の「芝で行スポーツで起こりやすい」と書きましたが、天然芝より硬い人工芝の方が起こりやすいようです。またシューズの靴底の状態も影響しやすく、柔らかいと発症しやすいようです。(人工芝用スパイクは柔らかめ)
つまり、地面が硬く靴底が柔らかいほど、母趾が反らされやすいということですね。バスケットなどでも起こるようですよ。
③ ターフトゥの症状
ターフトゥでの症状は以下の通り。
・圧痛(患部を押すと痛い)
・荷重痛(母趾のつけ根に体重をかけると痛い)
・可動痛(特に、母趾を反らすと痛い)
・腫脹(患部周辺が腫れる)
・熱感(患部が熱を持っている)
・異常可動性(母趾を反らすと、反対の足より大きく反る)
④ 治療
ターフトゥの治療は、一般捻挫治療同様「患部安静」につきます。初めて傷めた時には特に、安静を徹底するべきです。
RICE法(第11回「応急処置RICE法」参照)は勿論ですが、テーピングなどで患部固定も行うべきでしょう。固定は母趾の背屈制限(反り防止)です。
状態に応じて、温熱、電気、超音波など物理療法等や種子骨付近緊張緩和のために足底マッサージも有効です。
⑤ 予防
ターフトゥを起こしそうな競技の選手はご留意を。
・足底筋の柔軟性アップ(マッサージやストレッチ)
・足趾の関節可動域訓練(特に背屈は硬くないか?)
・足底筋の筋力アップ(ゴルフボールつかみやグーチョキパー)
・柔らかい靴底を避ける
⑥ 私見ですが
ターフトゥ、ラグビーでもたまにいます。理想としては、症状を完全に取り除いた上で徐々に復帰といきたいものですが、騙し騙し競技を続けている選手が多いのが実情です。
決して推奨するわけではありませんが、もし僕の選手時代でもやはり休まなかったと思います。(正確には、休めなかった?)トレーナーとしても何とかしてあげたいので、テーピングやクッション材を駆使してサポートしてあげています。でも、万一悪化していくようであれば一旦休むべきです。そうでなければ症状が治りにくいどころか、種子骨骨折なども起こる「種子骨障害※」が合併するかもしれません。そうなると更に大変なので、それは絶対に防ぎましょうね。
※種子骨障害:踏込動作をはじめとする強い負担により、種子骨にトラブルをもたらしたもの。種子骨付近の炎症をはじめ、種子骨骨折を起こすこともある。(ターフトゥと場所も同じだし、症状がとても似てます)